大人の片思い…「何もしない」は正解?人知れず想いを寄せる36歳の恋

※サービスを知っていただくための創作記事です。現実になることを保証するものではございません。

片思いのはじまりは木曜日に

昭和に建設されたであろう市民数に対して無駄に大きすぎる市民文化ホール、その受付で栄子は今日も1500円のチケットをさばいていた。
行政大赤字と名高いイベント毎週木曜日の18時「市民文化の日」と定められたその日には、小劇団の演劇や、地方のオーケストラが出演しても、観客数はいつも固定の19人。
1人入るのがやっとの小部屋のパイプ椅子に腰掛け、プラスチックの受付窓越しに、背の高い男性の姿を確認する

片思いのはじまりは木曜日に

(あ、イケオジがきた)

栄子が勝手にイケオジと呼んでいる、スーツの紳士45歳
「18時の落語、1枚ね」
イケているおじさんだからイケオジ。
栄子も36歳と人をおじさん呼ばわりできる歳のではないのだが、彼は本当にイケているおじさんというだけではない。
実際に名前が「池尾」さんなのだ

「池尾さん、今日古今亭ですよ」
「いいねえ」

プラスチック越しに見る仕立ての良さそうなスーツ、本日はベージュ。
池尾は連れもおらず独りでこの市民文化の日に欠かさず通い続けて3年以上。栄子とはここ1年近く顔見知りで会話をする間柄にはなっていた。
「落語は3ヶ月ぶりだ」
「どうぞ楽しんで。いってらっしゃい」

栄子が秘かに片思いしてる相手……池尾だ

片思いのあの人とのささやかな楽しみ

18時に無事公演がはじまったら、会計帳にチケット枚数を記載し、金庫を締める。ちょうど今の季節は、ガラガラの駐車場と空の境に夕日がじっくり沈んでいく時間だ。栄子はそれをのんびり眺めるのが好きだった。
(イケオジさんの時計はこの前見たのと違う革のブラウンのベルトだったな、スーツに合わせているのかな…)

片思いのあの人とのささやかな楽しみ

ぼんやりあれこれ、あの人への想いを馳せるとあっという間にあたりは真っ暗。会場からいつも変わらないメンツがパラパラと出てきてハッと我に返る。
池尾は必ず灯りを落とした受付に立ち寄り、栄子に感想を言うのが決まりだった。
「どうでしたか?」
「元々あんまり好きじゃなかったんだけど、古典落語が特によかったなあ」
いきなり勢いよく感想をしゃべる日は池尾にとって当たりだった日だ。
「来週はなんだっけ」
「えーと、演劇ですね。劇団ゴロゴロですって」
「演劇かあ。じゃ、また来週」
栄子にとっては古典落語と言われてまったくピンと来ない。けれど毎週繰り返される池尾とのこのひと時が、池尾に片思いしている栄子にとっては、とても大切な時間だった

片思いのあの人の運勢を占う秘密のルーティン

実は栄子にはもうひとつ、池尾には言えない小さな日課があった。
登録している占いサイトで密かに池尾のことを占っていた。この占いサイトは気に入っていて、栄子の性格や日々の運勢がぴたりと当てはまることが多く、日々参考にすることも多かった
ふとした会話の流れで、11月3日の文化の日生まれの45歳という事を知り、彼の誕生日を知ってから「あの人の異性のタイプは……」「あの人に備わる才能と仕事」など、池尾の性格やふたりの相性を占っていた。ちなみにふたりの相性占いは「相性85%」でまずまず悪くない診断結果だった。

あの人の才能と仕事について占ってみると……。

占い結果

「池尾さんは”なるべくなら自分の力でお金を稼ぐ独立したポジションの方がやる気になって頑張れるはずです”……なるほど。やっぱりあの感じは経営者か
くたびれた紺や黒のスーツを着ているところは見たことがないし、経営者というのは納得がいく。占いによると、池尾は素顔で飾らないタイプの女性が好みらしい。ベッドに寝転がり、日々あれこれ、気になる池尾の背景を占っては妄想にふけっているのだった。

片思いのあの人の運勢を占う秘密のルーティン

片思いの恋…狂いだす2人のタイミング

片思いの相手である池尾と話せる唯一の時間、いつもは楽しみでしょうがない木曜日だが、栄子、は今週珍しくカリカリしていた。月に1度役所の職員が徴収にくる日が木曜日というだけでテンションがさがり、さらに時間に遅れるという連絡が苛立ちを倍増させた。加えてこの職員というのがなんともやかましいおばちゃんで、一刻足りともあののんびりした時間を邪魔して欲しくなかった。
着いた頃には、17時半、公演の受付は始まっている。おばちゃんは独りごとを言いながら狭い小部屋でバタバタとプラスチックの引き出しを開け締めする。
「えーっと。判子、判子、押すんだったよね」
「ここに資料まとめてあります」
「どこに押すんだったかしら」
「右上の四角のところです、3枚続けてになりますから」
おばちゃんの声は大きく、プラスチックがぼよんぼよんと反響する。
駐車場の先に背の高いスーツ姿を発見
(間に合わなかったな……)
池尾がきてしまった。

片思いの恋に立ちはだかる壁

片思いの恋に立ちはだかる壁

「18時の演劇、大人1枚ね」
いつもの通り、さらりと注文する。本日のスーツはライトグレー。
「あら、池尾ちゃんじゃない!?」
栄子はぎょっとしておばちゃんを見る。まさか知り合い……!?
「やーだ、元気?お久しぶり」
「本当だ!ご無沙汰してますね」
「もう引っ越されてずいぶんだもんねえ。この間、別れた奥さんにスーパーで会ったわよ!
栄子の血が凍る。
「彼女、元気でした?」
「相変わらず、おキレイ。でもまだ独身みたいよ。池尾ちゃん結婚は?」
「僕は生憎ご縁がなくて。もう結婚はいいかなって
「あのっ」
栄子は堪え切れずに2人の会話に割り込む。
「もう始まりますけど」
「本当だいけない。それじゃ、また」
池尾はさわやかな営業スマイルを見せて、駆け足でホールに入っていく。
指輪はしてないから結婚はしていないと思っていたけど、バツイチだったかのか。
“もう結婚はいいかなって”
その言葉が頭の中に連呼した。

苦しい片思い…諦めるべき…

彼の過去を知って、あの日は落ち込みが戻らず、公演後に立ち寄ってくれた池尾ともなんだかたどたどしい会話しかままならなかった。気の利かない自分に焦り、変な返しをしてしまう。池尾も眉をひそめてその日は立ち去った。
元々異性との会話が得意じゃない栄子だったが、余計な事が頭に入っただけで定型文しか口にでなくなる。それからというもの、片思いの彼との楽しい会話のはずが……調子の戻らない妙なキャッチボールが続いていた。

苦しい片思い…諦めるべき…

池尾に好意があったのは確かだったが、不思議と池尾のことをそんなには知りたくなかった。ただ少し会話をして、ちょっと占いを足しにして頭の中で彼の人物像を積み上げていければそれで十分だったのだ。
「一回結婚して失敗してるってことだもんね……」
ベッドに寝転がり、自分の結婚占いをだらだら眺める。

もう結婚はいい、か……。
その日、栄子は占いの「お相手」の登録情報から池尾を削除した。

占いサイトで何気なく目に留まったメッセージ

気分が乗らない日が続いていても、毎日の運勢占いが目に入る。

今日の運勢の診断結果は……。
”もし思うようにいかなくて中断していることがあるのなら、再開するチャンスです。 どこを改善するべきか。何をするべきか。そこに焦点を当てて、じっくり考えてみてください。”

今日の運気自体は悪くないらしい。
そういえば……と栄子はもう一度池尾の生年月日を「お相手」情報に登録する。

この占いには人生のシナリオといって、四柱推命を基に自分や相手の人生を、過去から未来まで年表のように見れるコーナーがあるのだ。
ただお相手の年表は有料。栄子は占いサイトで課金はしないと決めているのですっかりスルーしていたが、今日の占い結果の「再開するチャンス」その言葉に背中を押されて「池尾さんの人生のシナリオ」を購入した。

「うわ、嘘でしょ……」
そこには池尾が離婚しそうな年、離婚した理由、離婚したあとの人生が事細かく書かれていた

人生のシナリオ鑑定結果

どうやら占いによると、若さと勢いで結婚したが、仕事での異動や転勤がきっかけですれ違いになり、夫婦関係に摩擦が生じて、4年ほどで離婚しているとかかれていた。

「これが本当に当たってたらすごいな……」
それからは再び仕事に励むものの、占いによると昨年くらいが人生の転機で運気が好転しているようだった。”趣味に打ち込む年になる”と……。
「……私何やってるんだろう」
いつも占いばかりしてるけど、一方的にあの人に嫌気がさしてこのままなにも行動せずにこの恋も終わるんだろうか
頭の中で想像する。
あの木曜日に誰か相手を連れて来たとしたら。
感想は私じゃない誰か別の相手と共有していたら。
(そもそも池尾さんが恋愛に前向きじゃないとしたら、独りでそっぽ向いてどうにかこうにかなるわけないじゃない。少しくらい何かしてもいいのかも……)
なんでいつも同じでいたんだろう。「再開のチャンス」は今来てるのに。栄子の中で何かが変わる気がした。

片思いから一歩踏み出す勇気

今日は念入りにメイクをした。別に告白しようってわけじゃない。
ただ、好意を持ってますって気持ちが少しでも伝わるといい……と意気込んだものの実際は完全に勢いだけの挙動不審だった。
目線の先にスーツ姿の男性。
(ヤバイ、来た来た来た)
「18時大人1枚ね」
「あ、ハイ、えっと。……ハイ」
栄子は、チケットを渡してしょんぼり下を向く。
「じゃ」
池尾はいつもと変わらない様子で、去っていく。
ああ、またいつもと同じだった……と、その時。
「栄子ちゃん、メイク少し変えた?」
少し戻ってきたのか、顔をひょっこり小窓に出してのぞかせる。
「え? ハイ、えっと今日おしゃれしてて、その」
汗がすごい。
あの、このあと私とお茶でもいきませんか?
池尾は驚いたように目をまるくする。
いいの?近々僕も誘おうと思ってたんだよ
とにっこり笑った。
「じゃあ、公演後にね」
栄子はカウンターの下で小さくガッツポーズした。

片思いの恋から交際へ

その日のお茶がきっかけで、栄子と池尾は晴れて付き合うことになる
実は池尾は栄子目当てでずっと通っていたのだが、勇気がでなくて一度もお茶に誘えなかったらしかった。

片思いの恋から交際へ

「僕バツイチだからさ、こんなおじさんでバツイチとかないよなーって思って」
驚いたのは、池尾の性格や職業、離婚の経緯なんかは例の占いが驚く程ぴったりと当たっていたのだった
「結婚も正直もういいって思ってたんだけどさ、栄子ちゃんのこと気になっちゃって。この人なら結婚してもいいなって思うくらいじゃないと、なかなか動けなくて」

唯一占いと違っていたのは、池尾が思ったより繊細な性格だったこと。
それ以外は概ね占いの通り当たっていた
それもそもはず、何気なく気に入って使っていたこのサイトの占い師、中園ミホは大河ドラマや月9なんかを執筆している、すごい脚本家だったというから人生のシナリオの精巧さには納得がいく。

人生のシナリオ鑑定結果

サイトの占いのシナリオによると、栄子は来年37歳が婚期、結婚のチャンスと出ている。別に占いで結婚を決めろというわけじゃない、いい運気の日はちょっと積極的に、相性の悪い人は少しだけ警戒して。そんな些細な変化を楽しむだけでいい。占いは小さなきっかけにすぎないけれど、栄子が変わるきっかけにはなっていた

あの時、占い信じておいて良かった……
最初に占った 相性占いで「相性85%」というのはまんざらではない結果に治まっている。
栄子はまだ知らないが、占いに書かれている「運命の人」とは池尾のことで、ストーリー通りに結婚する。それを知るのはまだ先の話。

無料占いで福寿縁と人生年表を確認

無料占いでは、「あなたが生まれ持つ本質」から「あなたがこれからどんな恋愛をして過ごすのか」そして12年に3度訪れるという、恋愛や結婚など、何をするにも最高のタイミングである幸運期「福寿縁」がいつ訪れるのかが占えます。もしかしたら、あなたの幸運期ももうすぐかも……。

無料で占う


占い師プロフィール

あなたの運命を確かめませんか?

今すぐ入会